小型超音波センサー搭載

1.小型超音波センサー搭載の目的

MANOIセンサーボードを搭載 して「BLACK TIGER NEO」の自律バトル機能の強化に注力している。自律バトルではセンサーによる目標の正確な捕捉がポイントになる。

PSDセンサーは指向性が高く、かつ感知範囲が15cm〜80cmと自律バトルに適した感度があることから、4方向をセンシングするため、当初MANOIセンサーボードの電源供給限度の5個まで搭載した。さらに8方向をセンシングするために、3.3V電源ボードを製作して、4個のPSDセンサーを追加搭載して合計9個搭載している。

ただ、8方向にセンシング可能でも、PSDセンサーはその指向性の高さ故に、45°の旋回によっても、攻撃射程内にある目標を常時捉えることができていない。また、PSDセンサーは感知距離が最大80cmであるが、距離が離れると、指向性が高いので、なかなか目標を捕捉できない。

これらの欠点をカバーするために、超音波センサーの使用を検討していたが、従来の製品はPCでの発振などが必要で簡単に使用できないものであった。最近、メカロボショップ が小型超音波センサー MX001 LV-MaxSonar EZ0〜4 を取り扱っていることを知り、入手して自律バトルへの応用を検討することとした。

2.小型超音波センサー( LV-MaxSonar-EZ4 )について

MX001 LV-MaxSonarR には、感知範囲の広さにより、EZ0〜4の5タイプがある。特徴・仕様は以下のとおり記載されている。
・2.5V〜5.5V電源対応 :電源電圧範囲が広いため、3.3V系、5V系どちらでも外部の安定化電源無しにそのまま接続できる。
・インターフェースはパルス幅出力、アナログ電圧出力、シリアル通信の3種類が用意されている。どのインターフェースも複雑なセットアップなしで使用が可能。
・小型軽量 :19.9 x 22.1 x 16.4mm / 4.3g
・広い測定範囲 :0 〜 6.54m
・測定精度 :2.54cm単位で出力。
・測定頻度 :20Hz間隔で測定。
・超音波センサー周波数 :42Khzを使用。とある。

なお、超音波センサーによる目標までの距離の測定は、超音波の発信とその反射音の受信の時間の間隔の長さから計算している。超音波センサーの原理については、MIRS0105技術調査超音波センサ、 超音波センサ概要/原理/分類/用語解説 を参照した。

3.小型超音波センサー( LV-MaxSonar-EZ4 )感度試験(その1)

1)搭載場所:指向性が最も高いEZ4を試験搭載することして感度試験を実施した。設置場所は転倒した時の衝撃が大きいと考えられるが、配線の容易さなどから「BLACK TIGER NEO」のラージカウルの前面とした。



2)試験方法:MANOIセンサーボード(Ch24)に接続し電源は3.3V電源ボードから供給。センサー表示をさせてセンサー測定値を読み取った。ロボットは机上に設置して部屋の壁を感知させた。

3)結果と考察

・センサーと壁との距離(cm)⇒センサーボード測定値
 320cm(1054)120cm(365)33cm(95)20cm(52)

・PSDセンサーのセンサー測定値(最大2300位)との比較から、当初十分な感度が確認できなかったとしたが、320cmで1054のセンサー値を確認した。超音波センサーのセンサー出力は目標が近いほど高いと考えていたが、遠いほどセンサー出力が高いことがわかった。また、このセンサーの出力値はPSDよりもブレが少なくかなり安定した値を出力していることも分かった。

4.小型超音波センサー( LV-MaxSonar-EZ4 )感度試験(その2)

1)試験方法:センサーの接続と測定条件は前回と同じ。自宅の玄関からの廊下で玄関扉に向けて感度試験を行った。



2)結果と考察

・距離⇒測定値1回目、2回目
 2m(67、573)3m(930、940)4m(528、524)5m(868、867)6m(360、1343)

・5mまでは再現性のある測定値が得られた。また、3mまではほぼ距離と測定値が直線関係にあるが、4mでは測定値が低下している。5mで測定値が再び高くなっている。6mではばらつきが大きくなっている。4mで測定値が低くなっている原因は不明。また、6mでは測定値が高く出る場合と低く出る場合があったが、EZ4は指向性が最も高いタイプなので反射波が捕らえられていないのかもしれない。

・今回の感度試験の結果から、小型超音波センサー( LV-MaxSonar-EZ4 )は15cmから3mまではリニアで再現性がよい測定値が得られることが分かった。また、製品の解説には出荷時には「0"、6"(約15cm)、そして12"(約30cm)の距離が手で確認されます.次に48"(約122cm)の天井までの距離が確認されます。」とある。したがって、実際の自律競技などに使用するには十分な感度と再現性があることが分かった。

5.小型超音波センサー( LV-MaxSonar-EZ4 )感度試験(その3)

1)設置場所:超音波センサーはラージカウルの前面に設置してあったが、当初の想定どおり転倒した時の衝撃が大きいので、カウルの下の中央の旋回軸サーボの前面に両面テープで取り付けた。配線的には良くないが、この方が見た目はスマート、また、低い位置の目標の捕捉ができる。



2)搭載の目的:超音波センサーを少し離れた距離の捕捉に利用しようと考えていたが、近接、中接の攻撃に利用した方がよさそう。感知範囲がPSDより広いので、PSDの指向性の高さによる近接(1800〜4095)、中接(1200〜1799)の捕捉漏れを補い、特に前方と後方の防御的攻撃に利用の価値がありそう。まず、攻撃に応用した方が無難かもしれない。当初想定した離れた距離用に使用すると周囲の操縦者や審判など誤った目標を捕らえるリスクが高い。

実戦では対戦相手に接近して感知範囲に入っているのに攻撃モーションが働かなかった。センサー値の設定値は間違っていないが、PSDセンサーの補足漏れによると考えられる。超音波センサーで補完することを検討。

攻撃の到達距離の測定:正拳前右(25cm)、旋回前拳右(43cm)

3)距離とセンサー値の測定

センサーと壁の距離を15〜45cmまでの5cm毎のセンサー値を10回測定して平均値を求めた。
15cm(45)20cm(52)25cm(62)30cm(67)35cm(82)40cm(112)45cm(123)

4)センサールールの設定(センサールールは近接と中接とそれぞれの攻撃モーション・回避モーション、状況1と状況2を設定してジャンプ)と結果(BTNにセンサールールをUplardして実機試験を実施)

@No.A0
近接:センサー値0〜64⇒正拳右前・左横
中接:センサー値65〜120⇒旋回前拳右・左横
結果:センサー値の設定が高すぎて、背景を捕えて反応する。これでは設定値が高過ぎる。事前の距離による測定値と実際の感知にはかい離がある。

ANo.A0-2
近接:センサー値0〜45⇒正拳右前・左横
中接:センサー値46〜65⇒旋回前拳・左横
結果:背景は捕えなくなった。射程に入ると旋回前拳が出る。ただ、かなり近くても中接の旋回前拳が出る。近接の攻撃が出にくい。

BNo.AO-3
近接:センサー値0〜50⇒正拳右前・左横
中接:センサー値51〜65⇒旋回前拳・左横
結果:射程に入ると旋回前拳が出る。近くでは近接の攻撃が出るようになった。これ位が適当か。

5)総括

・超音波センサーを実機へ搭載が可能と判断した。事前の測定値と実機試験では感度の乖離が大きかった。実機での試験で距離とセンサー値を確認するとかなり正確にセンサー値を設定できる。

・EZ-4は最も指向性が高いタイプであるがほぼ正面しか感知しない。指向性は高いがPSDよりも広いので目標捕捉に適している。もう少し広い範囲を感知するタイプがよいのかは実戦での結果から判断する。

・センサールールを入れる位置はPSDセンサールールの捕捉の次で探索の前。前面のみなのでPSDの補足を目的。入れた場合と入れない場合も実戦で比較する。

・今回の実機試験の結果から、小型超音波センサーはPSDの替わりとして十分に使用できることが分かった。このセンサー(4個〜8個)でセンサールールを作成した場合、PSDセンサー(4個〜8個)の同じセンサールールよりも同等以上の性能が期待できる。また、3m位まで離れた距離までかなり正確に感知できるので、応用範囲が広まることが期待できる。 ・できれば超小型センサー(8個)のみでセンサールールを作成して、PSDセンサー(8個)と比較したい。

6.小型超音波センサーまとめ
小型超音波センサーの自律バトルへの応用を検討してきたが、概ねその長所、短所が分かってきた。

MaxBotix Inc.の小型超音波センサー LV-MaxSonar-EZ1〜4の特徴(長所)は以下のとおり。
@超音波の照射範囲によりEZ0,EZ1,EZ2,EZ3,EZ4があり、目的に応じて適宜選択可能。 EZ4が最も照射範囲が狭く、指向性が高い。
A発信機と受信機の一体型で、出力はデジタル、アナログなど3通りあり、直接、コントロールボードのアナログ端子などに接続可能。
B3V〜5Vで使用でき、MANOIセンサーボード3.3VでもRCB-3の5Vでも直接接続可能。
C消費電流が3V では2mA,5Vでは3mA程度と非常に少なく、PSDの最大150mAと比べて省電力。
D感知距離と出力の精度が高い(特に短距離でPSDと同等)。
E小型で重量も4.3g程度なので両面テープで簡単に貼り付けられる。取り付け用のねじ穴も2か所あり搭載が容易。

一方、超音波を使用することによる干渉(短所)も分かってきた。干渉があるとノイズとなり正確な距離感知ができなくなる。
@仕様では15cm〜6m測定可能とあるが、3m以上になると床に反射した超音波と直進する超音波が干渉する(実際に観察した)。
A2個以上搭載すると、位相のずれにより相互に干渉する(位相を同期させる必要があり解説書FAQに接続法が記載されている)。
B自律バトルにおいては同型の超音波センサーを搭載した相手の発する超音波と干渉する。

短所の対応策・解決策
@自律バトルではPSDの感知範囲で使用するので、特段問題にならない。長距離に使用すると、周囲にいる操縦者、レフリーを感知するリスクが高くなる。
A角度が90°ずれた場合、180°ずれた場合の状態を確認する。同期させる配線は煩雑になり避けたい。
BPSDを補完するシステムとすれば特段の問題はない。

以上を考慮して、PSDセンサーと超音波センサーの複合システムを試みる。うまく設計できれば3.3V電源ボードなしで、自律センサーシステムが組める(PSD4個と超音波センサー4個の合計8個で750mA以下にできる)。

7.小型超音波センサー4個のセンサーシステム試験
小型超音波センサー4個のセンサーシステムの動作試験を行った。目標は紙で巻いた500mlペットボトル及び2Lペットボトル。1mのボード上の端の方に目標をロボットの正面からずらして設置。

(1)第1回HS4(小型超音波センサー4個)センサールール試験




◎結果と考察
・目標の補足、攻撃ができている。
・PSDとそん色のない捕捉感度がある。
・捕捉の距離が短いので捕捉の感度を調整する必要あり。66〜80⇒66〜90?
・4個でも干渉の問題はなさそう。
・取り付け位置は腕先の方が良いかもしれない。(転倒した時にセンサーに衝撃かかかるので回避する必要あり。)

(2)第2回HS4(小型超音波センサー4個)センサールール試験
前回と同じセンサールール設定で再度センシングの確認。





(3)第3回HS4(小型超音波センサー4個)センサールール試験
捕捉の設定を61〜80⇒61〜90、探索の設定を81〜4095⇒91〜4095に設定し、捕捉の距離を長くした。




(4)HS4(小型超音波センサー4個)センサールール試験
捕捉の設定を61〜80⇒61〜90、探索の設定を81〜4095⇒91〜4095に設定し、捕捉の距離を長くした。目標を500mlペットボトルから2Lペットボトルに替えて従来の大きさで試験した。






◎結果と考察
・500mlペットボトルの高さはロボットの高さに調整してあるが、2Lペットボトルの高さは5cmほど低い。
・2Lペットボトルは幅が広くなっているので捕捉しやすい。ただ、高さが低いので左右横のセンサーが捕らえにくい。
・左右横の小型超音波センサーはもう少し下(腕先)に設置した方がよい。ただ、あまり下にすると床の反射波をひらうので注意が必要。
・攻撃の距離が若干合っていない。検討の余地あり。
・捕捉の設定を80⇒90にして感知範囲を広げたが大きな相違は見られない。
・試験中にNo29のコネクタがセンサーボードからはずれた。配線の工夫が必要。



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