マイロボット「BLACK TIGER α」の製作 Part 3


「BLACK TIGER α」は中小型多目的機をコンセプトに、メリッサをベースに機体を製作し、また、ハンドユニット「SC-Hand1」を搭載するなどして、機能強化を図ってきたが、メリッサ脚(レッグフレームA+B)はコンパクトではあるが脚長が短く、ROBO-ONE規格に準拠させることができないことが明らかとなった。

そのため、膝をダブルサーボ化(2軸追加)するとともに、脚部サーボKRS-4013HVをKRS-4034HVに換装してトルクを強化しつつ、脚長を伸長し、ROBO-ONE規格準拠機体「BLACK TIGER α2」に改造してきたが、当初の目的とした中小型多目的機には合致しない機体となり目的が不明確となっていた。また、搭載したハンドユニット「SC-Hand1」もその機能を生かすことができていなかった。

一方、「BT-NEO」はハイブリッドセンサーシステムを搭載した自律バトル機として自律バトル機能の向上を図ってきたが、製作当初の構造を踏襲しているため腕のリーチが短く、最近のROBOーONE規格の大型機体との対戦にハンディが目立つようになった。

また、ハイブリッドセンサーシステムにも、センサー取り付け位置による大型機体の感知・捕捉の限界、ラグタイムの問題などがあり、特にプロポ操縦の大型機体との対戦には不向きな面があった。

これら「BT-α2」と「BT-NEO」の問題点を解消するために、以下のコンセプトで「BLACK TIGER α2」を「BLACK TIGER α3」へ改造することとした。

1.改造機体「BLACK TIGER α3」製作の基本的考え方

[BT-α3の特徴/コンセプト]
自律攻撃システムを補助攻撃システムとして備える大型バトル専用機体(ROBO-ONE規格最大の30p腕を持ち、プロポ操縦と自律バトルシステムが相互に補完するセミ自律バトルシステム機体)とする。

[操縦法]
1.移動はプロポ操縦を基本とする。
2.攻撃はプロポ操縦も可能とするとともに、PSDセンサー4個による自律攻撃システムを補助攻撃システムとして備える。
(注)攻撃のみに特化するので、起上、捕捉・接近、探索のセンシングが不要になるため、センサーシステムが単純化でき、高速化(ラグタイムの縮小)も期待できる。

[構造]
1.腕構造はBTの構造を踏襲し、最大の30pとする。腕の伸長にはKRS-4000HV用レッグプレートSC-4000L1 x6 を使用する(腕基部にKRS-4014HVを使用して腕の攻撃力強化を図る)。この改良に伴いハンドユニット「SC-Hand1」は撤去する。
2.脚構造はBT-αの脚を踏襲する(BT-αは膝ダブルサーボ)。
3.脚部にはKRS-4014HVを使用して強化。
4.脚基部ロール軸にKRS-4014HVを使用して両面起上を可能とする。
5.足裏はバスタブソールラージを使用。
6.(胴体ロール軸にKRS-4014HVを使用して攻撃力の強s化を図る。)
(注)平行リンク脚マーキュリ-採用も考えられるが、「BT-ZETA」の中止、旋回攻撃不可、サッカーに不向きなどの理由から、今回は脚長25pのBT-αを活用する(腕30p可能、BT-NEOのモーション利用可能など)こととして見送り。

[モーション]
1.移動モーションは前後左右とJ旋回でプロポ左に配置、起上りは両面起上とし、SHFT3に配置。攻撃モーションはプロポ右に配置(8方向の旋回攻撃)。SHIFTしてのモーションは使用しない。
2.自律攻撃モーションはプロポ攻撃モーションとは違ったものを設定。Hit&Awayは踏襲。
3.前方攻撃モーション、屈んでの離脱モーションなど新モーションを工夫。

また、改造に伴い、改造機体はVersion 3の意味で「BLACK TIGER α3」 と表記することとした(対外的名称は「BLACK TIGER α」とする)。なお、「BT-α1」はメリッサ脚とハンドユニット搭載機、「BT-α2」は脚ダブルサーボ化(ハンドユニット搭載)機、「BT-α3」は脚ダブルサーボ化、腕30p伸長、自律バトルシステム搭載機。

2.改造機体「BLACK TIGER α3」主要仕様

(1)脚部:イトーレイネツSC-4000シリーズ(SC-4000L1、SC-4000ARM-Tなど)、膝はダブルサーボ
(2)胴体部分:「R-Blue」
(3)ヨー軸:胴体旋回軸あり、脚旋回軸なし
(4)腕:ROBO-ONE規格最大長30p、構造はNEOを踏襲
(5)足底:バスタブソールS-02、足裏:滑り止め装着
(6)コントロールボード:RCB-3HV
(7)センサーボード:MANOIセンサーボード(発声装置搭載予定)
(8)加速度センサー、ジャイロセンサー2

3.RCB-3HVの設定
 新たに「BT-α3」用のH&Hを設定する。

(1)シリアル制御
「BLACK TIGER NEO」と同じ、シリアル制御とする。

(2)Channel配置
「BLACK TIGER α3」Channel配置は「BLACK TIGER NEO」と同じ配置として、モーションの互換を可能にしている。なお、脚部分はCH11⇒reverseの必要がある。

4.改造機体「BLACK TIGER α3」の製作

(1)腕部分の製作

@腕伸長用のKRS-4000シリーズ用レッグプレートSC-4000L1の黒塗装を行った。
A腕部分の組み立て。
Bコントロールボードにサーボの配線を行った。

(2)ホームポジション(HP)の調整

@トリムを調整(Trim4として保存)
Aホームポジション(HP)の作成、NEOのHPを準用するが、腕は折りたたんでの姿勢となる。
Bスタートアップモーション(HP)を設定、屈脚終了モーションを作成
Cピッチ軸とロール軸のジャイロを設定

「BLACK TIGER α3」 ハンドユニット(SC-Hand 1)撤去・腕伸長 2012.3   


(3)「BT-NEO」の「BT-α」へのモーション変換

脚部分はBT-NEOのChannenl配置と同じであるが、CH11⇒reverseの必要がある。
脚変換4:CH11⇒reverse

(5)基本モーションの作成

@前進歩行モーション、後退モーションを変換して作成
・腕の伸長に伴い重心が上がるので、特に前後の歩行モーションの作成が難しくなる。
・HPの適正化、ジャイロの強めの設定、前後歩行の停止時は足をそろえるまえのポジションの時間を長くとるなどの工夫が重要。
・スラロームも可能とする。
A屈足両起上モーションを変換作成。
・腕が長くなるので畳んでコンパクトに!
B左横、右横移動モーションを変換作成。
CJ左旋回、J右旋回モーションを変換作成。
これをプロポ左に配置、起上りはSHFT4に配置。後は修正して適正化。

(6)攻撃モーションの作成

プロポ攻撃用モーションと自律攻撃モーションを別に作成して、攻撃の多様化を図る。

[プロポ操縦用攻撃モーション]
以下の旋回攻撃モーションを左プロポに配置
低い拳から上へ上げる
@前
A後
B左
C右
D前右45°
E前左45°
F後右45°
G後左45°

[自律センサーシステム用攻撃モーション]
攻撃後に3歩移動するモーションを加えておく。
@前:接近戦用
A後:接近戦用
B右:接近戦用横に回す、または斜め上へ上げる
C左:接近戦用横に回す、または斜め上へ上げる

(7)補助攻撃システムとしての自律攻撃システムの再検討

操縦が不得手のことから、2008年のNEOへの自律バトル機能搭載から、8方向へのセンサー配置を始めに、現在のハイブリッドセンサーシステムやそのセンサー探索プログラムの改良を進めるなど工夫してきたが、転倒、探索、近接などのセンシングに負荷が大きく、限界も見えてきたため、ここらで戦略の転換を図ることとした。すなわち、完全自律バトルを放棄し、操縦の不得手を補う補助攻撃システムとしての自律攻撃システムとして再検討することとした。

1.補助攻撃システムとしての自律バトルのコンセプト
1)MANOIセンサーボードにPSDセンサーと超音波センサー(広角)を配置するハイブリッドセンサーシステムとする(NEOのシステムの継承)。
2)PSDセンサーと超音波センサーの配置は、前後、左右の4方向とする(NEOのシステムの継承、センサーボードの電源からの制限)。
3)近中接攻撃センシングのみとし、転倒、探索、接近のセンシングは行わない(センシング時間の短縮)。
4)センシング距離は近中接の範囲とする(捕捉を確実にする)。
5)状況1はスタート方式を設定し、自動スタートのための前、右、左をセットする(状況に応じた自律システムの開始と確度向上)。
6)NEOとのセンサールールの相互利用を可能とするため、センサーボードのCHはNEOを踏襲する。
7)各攻撃モーションに3歩の移動を加える。
8)PSD優先のセンサールールと超音波優先のセンサールールを作成する。
9)センサー取付位置(高さ)を捕捉に最適位置とする(大型機への対策)。 10)完全自律も可能にしておくために、3軸加速度センサーを設置・接続しておく(在庫あり)。

2.センサールールの基本的な考え方
1)センサーはPSD、超音波センサーのハイブリッドとする(ノウハウを生かす)。
2)PSDはGD12、超音波センサーは広角タイプを使用する。
3)PSD優先と超音波優先の2とおりを作成。また、PSDのみ、超音波のみも作成しておく。
4)センサーボードのCH配置は「NEO」を踏襲する。
5)スタートはPSDセンサーによる前方、左、右の3とおりで自動スタートで状況2にジャンプ。
6)攻撃は状況2(中接)、状況3(近接)の2とおりとし、相互にジャンプさせる。
7)各状況では転倒、捕捉、探索の感知は行わない。
8)各状況にはPSD優先の場合には、PSDで前、左、後、右、超音波で前、左、後、右のらせん順にセンスする。PSDと超音波センサーの各4方向の8センシングとする。
9)センシングの範囲は近接を中接をカバーする広いレンジとする。
10)攻撃のモーションの後に、回避モーションを加える。

3.NEOとの相違点
1)機体の構造上の違いはACEは足ロール軸なし。腕の長さの伸長とそれにともなう腕構造の変化。
2)センサー配置が同じであるが、設置位置を工夫。
3)NEOの腕を伸長し、センサールールを共有すれば、ほぼ同じ機能・性能の機体となる。

4.センサーの設置場所
胴体部分を感知できる高い場所とする(コードも短くてよい)。
@胴体ヨー軸サーボの前後
A腕第2サーボ横

5.センサールール
[PSD優先ルール]APU1
状況1(スタート)
@右PSD(1800〜4095)ジャンプ状況1
A前PSD(1800〜4095)ジャンプ状況1
B左PSD(1800〜4095)ジャンプ状況1
状況2(中接攻撃)
@右PSD(900〜4095)右拳下上⇒左横⇒ジャンプ状況3
A前PSD(900〜4095)旋回前拳下上⇒左横⇒ジャンプ状況3
B左PSD(900〜4095)左拳下上⇒右横⇒ジャンプ状況3
C後PSD(900〜4095)旋回後拳下上⇒右横⇒ジャンプ状況3
D右USS(0〜90)右拳下上⇒左横⇒ジャンプ状況3
E前USS(0〜90)旋回前拳下上⇒右横⇒ジャンプ状況3
F左USS(0〜90)左拳下上⇒右横⇒ジャンプ状況3
G後USS(0〜90)旋回後拳下上⇒左横⇒ジャンプ状況3
状況3(近接攻撃)
@右PSD(900〜4095)右拳下上⇒左横⇒ジャンプ状況2
A前PSD(900〜4095)正拳右下上⇒左横⇒ジャンプ状況2
B左PSD(900〜4095)左拳下上⇒右横⇒ジャンプ状況2
C後PSD(900〜4095)後拳下上⇒右横⇒ジャンプ状況2
D右USS(0〜90)右拳下上⇒左横⇒ジャンプ状況2
E前USS(0〜90)正拳右下上⇒左横⇒ジャンプ状況2
F左USS(0〜90)左拳下上⇒右横⇒ジャンプ状況2
G後USS(0〜90)後拳下上⇒右横⇒ジャンプ状況2
[USS優先ルール]AUP1

6.プロポ右配置
●正拳左   ●旋回前拳   ●正拳右
●左拳            ●右拳
●後拳左   ●旋回後拳   ●後拳右


(7)腕伸長の中止とハンドユニット(BLACK TIGER α2)の復元

バトル能を強化しようとして腕の伸長をしてきたが、ROBO-ONE規定の「指極長は脚長の240%」がクリヤーできないことが分かった(「BLACK TIGERα,α2,α3」のROBO-ONE規格準拠比較表)。やはり従来のハンドユニットの長さが限界であった。

(参考)「BLACK TIGER α」の改造バージョン(名称:定義)と掲載Part

BT-α(0):プロトタイプ(メリッサ脚) Part 1
BT-α(1):ハンドユニット搭載(メリッサ脚) Part 1
BT-α2:膝ダブルサーボ化(ハンドユニット)Part 2
BT-α3:腕伸長(膝ダブルサーボ)Part 3
BT-α2-2:ハンドユニット復元(脚上部サーボKRS4034HV換装)Part 4

Part 1:プロトタイプからハンドユニット搭載(BT-α0,BT-α1)
Part 2:膝ダブルサーボ化(BT-α2)
Part 3:腕伸長の試行(BT-α3)
Part 4:ハンドユニット復元(脚上部サーボKRS4034HV換装BT-α2-2)

マイロボット「BLACK TIGER α」の製作 Part 1
マイロボット「BLACK TIGER α2」の製作 Part 2
マイロボット「BLACK TIGER α3」の製作 Part 3
マイロボット「BLACK TIGER α2-2」の製作 Part 4


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