新型変則5脚ロボットの製作 Part 3 「BT-L45」



「BT-L5」,「BT-L15」で変則5脚ロボットの動作が実証されたので、ハイパワーのサーボを使用してより多くの機能を搭載可能とする新型変則5脚ロボット「BT-L45」を製作することとした。新型機は、従来どおり、基本的に既存部品を利用して製作することとした。

1.新型変則5脚ロボット「BT-L45」製作の基本的な考え方

(1)「BT-L5」,「BT-L15」のコンセプト「変則5脚 (anomalous 5-legged)」を踏襲した構造とする。
既存の二足歩行ロボットをそのまま応用可能とする変則5脚すなわち各脚は3軸として合計15軸。前脚の付け根サーボ2個はピッチ軸、後脚と頭部の付け根サーボ3個はヨー軸。その他のサーボはロール軸とする。

変則5脚が優れていると考えられる点は、@高速移動に適すると考えられる4脚移動が可能。A前脚2脚を接近戦バトルの際に攻撃用の腕として利用可能。これらをより有効にするため、脚は長めに設計する必要がある。

(2)サーボはハイパワーで高速のKRS-4013HVを使用、電源はLi-Po/11.1V、コントロールボードはRCB-3HV、シャーシ、アームはイトーレイネツ製、ボードカバーはKHR-3HV用、無線はプロポ。

(3)新型機は「BLACK TIGER LEG KRS-4013HV x15」から「BT-L45」(略名 開発番号)と命名。正式名称は「BLACK TIGER L45」(ブラックタイガーエルヨンゴウ」とした。

(4)搭載予定の機能
@高速移動(1)ハイパワーなKRS-4013HV搭載することにより4脚による「バウンド」移動。
A高速移動(2)イガア方式による車輪を搭載することによる移動。
B自律機能:PSDセンサー(超音波センサーは床からの反射があり高位置に搭載する必要あり)とMANOIセンサーボードによる自律探索行動機能。
Cサバゲ機能:砲台(ミニ電動ガン及び制御基板)、レーザー照準器(レーザー素子及び電源供給基板)、被弾センサー(太陽電池式被弾センサー及び制御基板)、カメラなどを搭載。

2.機体の製作
「BT-L15」のコンセプト「変則5脚」各脚3軸の15軸を踏襲するため、「BLACK TIGER ZETA」の機体をベースに製作することとした。

(1)BT-L45 Channel配置は1脚3軸としたが、胴体のyaw軸はそのまま残した。この胴体yaw軸の応用は別途検討。また、前脚(腕)のサーボ配置は運動性の検討の結果、「BT-L5」と同じ配置とすることとした。

(2)各脚は先端部分に長いアームを配置し、足先にシリコンチューブと滑り止めゴムを取り付けた。機体は状況に応じて高ポジション、中ポジション、低ポジションをとることができる。写真は以下のとおり。







3.モーションの作成
モーションは、「BT-L15」を踏襲して作成した。機体が最も高くなる(25cm)高ポジション、中ポジション、低ポジションでそれぞれ作成した。移動モーションも「ウオーク」(哺乳類的な歩行)、「トロット」(爬虫類的な歩行)、「バウンド」(走り)の歩容で作成した。●は実搭載

(1)基本ポジション
【後閉脚】
・HPH:高ポジション(1104)●
・HPM:中ポジション(1040)●
・HPL:低ポジション(1296)●

(2)中ポジション移動
【前進】
・前進2:ウオーク(1)●
・前進B:トロット(9)●
・前進T:バウンド(5)●
【後退】
・後退1:ウオーク(2)
・後退A:トロット(2)●
【横移動】
・右横:ウオーク(4)●
・左横:ウオーク(8)●
【旋回】
・右旋回(6)●
・左旋回(10)●
・旋回右微:照準用(1030)●
・旋回左微:照準用(1034)●

(3)低ポジション移動
【前進】
・前進LB:トロット(521)●
・前進LU:バウンド(517)●
【後退】
・後退LB:トロット(1026)●
【横移動】
・右横T:バウンド(516)●
・左横T:バウンド(520)●
【旋回】
・右旋回L(518)●
・左旋回L(522)●

(4)格納:(1056)●
(5)上向起上(2048)○

4.動作試験
新型の変則5脚機体「BT-L45」の動作試験をサバゲのフィールドで実施した。前後左右の高速での移動能力を確認した。



5.多脚ロボットコンテスト
第6回KHRアニバーサリーが浅草ROX3で開催され(2010.6.5〜6)、 6月5日の多脚ロボットコンテストに「BLACK TIGER L45」で参加した。デモは2分間で、最初に低姿勢での爬虫類、カエル様の移動モーションを紹介し、その後、中高姿勢での哺乳類的な移動モーションを紹介した。時間切れで転倒からの起上りは規定時間外となったが紹介できた。バトル用のリング上であったので高速で十分に移動させられなかった。まずまずの出来か?もう少し時間がほしかった。




結果は優勝。いままで競技会に数えきれないくらい参加しているが優勝は初めて。金メダルとサーボKRS-2552HVの5個セット、ROBOSPOTの利用券をいただいた。初優勝を祝って記念撮影した。



6.「BT-L45」製作の総括(開発経過と特徴)

(1)「BT-L45」開発の経緯
多脚ロボットを製作しようと思ったが、フレームは既存のものがないし、また、フレームの設計、加工もできない。そこで、二足歩行ロボット「KHR-1」の機体を利用して多脚ロボットが製作できないか検討を始めた。

まず、「KHR-1」の胴体部の腕部に2脚、脚部に2脚、頭部に1脚を取り付けた。各脚は2軸として合計10軸の変則5脚ロボット「BT-L5」を試作した。「BT-L5」は多脚ロボットとして動作することが確認できた。ただ、各脚2軸では移動モーション作成に制約があった。

次に、各脚に1軸追加して3軸にした合計15軸の新型変則5脚ロボット「BT-L15」を試作した。この「KHR-1」の胴体構造を変えずに5脚を取り付けて製作した「BT−L15」は多脚ロボットとして十分に機能し、従来の4脚、6脚ロボットと同等以上の運動能力があることが検証できた。

そこで、「BT-L15」の基本構造を踏襲し、サバゲ用に高速移動が可能な変則5脚ロボット「BT-L45」を製作することとした。胴体部にはメリッサのボディを使用し、高速移動が可能となるように各脚を長くし、サーボモーターはハイトルクのKRS-4013 HVを使用した。「BT-L45」は従来の多脚ロボットを凌駕する運動能力を発揮し、様々な歩容で高速移動が可能であることが実証できた。

(2)「BT-L45」のコンセプト
二足歩行ロボットの機体をベースにした、あらゆる方向に高速移動が可能な、変則5脚ロボット。

(3)「BT-L45」の特徴
二足歩行ロボットの機体をベースにした、脚部2脚と頭部1脚がヨー軸1+ピッチ軸2、腕部2脚がロール軸1+ピッチ軸2の変則5脚の構造を採用している。また、サーボモーターにはハイパワーなKRS-4013 HVを使用している。

変則5脚構造とすることにより、脚部2脚それぞれが90度位置を変えることで、前後左右4方向への高速移動が随時可能となり、その場での高速旋回も可能となっている。また、爬虫類的な歩容、哺乳類的な歩容に加えて、従来の多脚ロボットでは見られなかったバウンドや蛙とびなどの歩容が可能となっている。

さらに、腕部の2脚と頭部の1脚は腕として機能させることが可能な構造となっており、バトル、障害物除去などに使用可能である。一方、胴体部にロール軸が1軸あり、これが仰向けに転倒した場合の起上りを可能にしている。


新型変則5脚ロボットの製作 Part 1「BT-L5」
新型変則5脚ロボットの製作 Part 2「BT-L15」
新型変則5脚ロボットの製作 Part 4「BT-L45」
新型変則5脚ロボットの製作 Part 5「BT-L45」



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