新型4脚ロボットの製作 Part 2 「BT-L44」



2009年12月から多脚機体の製作を開始し、試作機「BT-L5」及び KHR改造機「BT-L15」で変則5脚ロボットの動作が実証されたので、ハイパワーのサーボを使用してより多くの機能を搭載可能とする新型変則5脚ロボット「BT-L45」を製作した。

「BT-L45」の運動性は当初想定したとおりの性能を発揮し、第6回KHRアニバーサリー多脚ロボットコンテストで優勝を果たした。また、ロボでサバゲの装備をフル搭載しても運動性に特段の問題はなく動作した。

一方、多脚ロボット用の障害物コースの踏破については、大型の機体では運動性が不足することが明らかとなった。そのため、運動性の優れた新小型多脚機「BT-L44」を製作した。

「BT-L44」は、KRS-4013HVと脚の長さを長くすることによって運動性・機動性の向上を図った結果、第5回KONDOランド障害物レース(2012.1.8)及び第6回KONDOランド障害物レース(7/21/2012)でも優勝して、2連覇を達成し、「BT-L44」の高運動性が証明された。

ただ「BT-L44」は運動性の高い4脚機体として開発してきたが、当初想定した移動速度が得られておらず、そのための歩容もできていない。

歩容としては、遅い順に並べると、

@クロール(常歩 なみあし)最も遅い移動:左前足⇒右後足⇒右前足⇒左後足の順で、4本の足がそれぞれ前に出るタイミングが一致しない移動方法。動物の一般的な歩容であるが、「BT-44」では作成が容易ではなかった。速度はトロットと同程度。

Aウオークまたはペース(側体歩 そくたいほ)常歩より速い移動:左の前後2本の足をほぼ同時に前に出した後、右の前後の2本の足を前に出す動作を繰り返す移動方法。「BT-44」では安定性が今一つであった。要検討の歩容。

Bトロット(速歩 はやあし)側体歩よりリズミカルで小走りに近い移動:右後足と左前足⇒右前足と左後足を繰り返し、対角線上の2本の足を同時に前に出す移動方法。ロボットでは最も作成しやすい。現時点での「BT-L44」の最速の歩容。

Cバウンド(駆足 かけあし)速歩よりも速い移動、全力疾走時(襲歩)とほぼ足の動きは変わらない:左前足⇒右前足⇒右後足⇒左後足の順に繰り返す移動で、常に4本の足のうちいずれかが地面に接地しているのが特徴。左前足・右前足と右後足・左後足の動きにはほぼ差はない(が完全に同時ではない)。「BT-44」でも作成したことがあるが、速度が出ていない。要検討の歩容。

Dギャロップ(襲歩 しゅうほ)最も早い移動、全力疾走:足の動きは駆足と同じ。大きな違いは移動時に4本の足全てが地面から離れている時間がある。「BT-44」では作成できていない。

サラブレッドの高速歩容:ギャロップ


サラブレッドの高速歩容:ギャロップ


4脚ロボットの高速歩容:ギャロップ&バウンド


4脚ロボットの高速歩容:トロット


4脚ロボットの高速歩容:バウンド


一方、「BT-L44」は移動中に横に転倒しやすいこと、段差のあるコースの歩行が難しいなど欠点が見受けられた。

これらの問題点を解決するために、「BT-L44」の機体を改造することとした。なお、KONDO LAND 障害物競争の機体の規格は、3s以下、長さ30p、幅30p、高さ30p以下となっているので準拠させておきたい。

1.脚の改修

「BT-L44」の各脚の上部をSC-4000ARM-L(Long Arm) からレッグプレートSC-4000L1 交換した。これで脚長が約3p長くなり、動く角度も大きくすることができた。動作範囲が大きくなったので配線を長いものに交換し、サーボの動作を確認した。また、無線の受信機の設置場所を後部に変更した。

「BLACK TIGER L44」 脚の改修 2015.10  





2.高位(H:脚直立)での歩容モーションの作成

(1)モーションの命名法の整理。
・前進(開脚前進)M(中位)
・前進U(トロット:(速歩 はやあし)側体歩よりリズミカルで小走りに近い移動:右後足と左前足⇒右前足と左後足を繰り返し、対角線上の2本の足を同時に前に出す移動方法)M(中位)
・前進V(クロール:(常歩 なみあし)最も遅い移動:左前足⇒右後足⇒右前足⇒左後足の順で、4本の足がそれぞれ前に出るタイミングが一致しない移動方法) M(中位)
・前進W(ウオーク:またはペース(側体歩 そくたいほ)常歩より速い移動:左の前後2本の足をほぼ同時に前に出した後、右の前後の2本の足を前に出す動作を繰り返す移動方法)M(中位)

(2)脚のHP
・高位(H):脚直立
・中位(M):脚直角
・長脚中位(W):脚120°新
・低位(L):

(3)・前進UH(トロット:速歩 はやあし)の作成

側体歩よりリズミカルで小走りに近い移動(右後足と左前足⇒右前足と左後足を繰り返し、対角線上の2本の足を同時に前に出す移動方法)の作成モーションの検討を行った。後足の曲げ方を後方から前方に変更した。speedは5。

基本ポジション(4/1)
左前足後:右前足上
CH4:2677,CH1:2677
CH5:-533,CH2:1067
CH6:0,CH3:1067
左後足上:右後足後
CH10:-2677,CH7:-2677
CH11:-1067,CH8:533
CH12:-1067,CH9:0

基本ポジション(4/2)
左前足上:右前足下
CH4:2677,CH1:2677
CH5:533,CH2:0
CH6:533,CH3:0
左後足下:右後足上
CH10:-2677,CH7:-2677
CH11:0,CH8:-533
CH12:0,CH9:-533

基本ポジション(4/3)
左前足上:右前足後
CH4:2677,CH1:2677
CH5:1067,CH2:-533
CH6:1067,CH3:0
左後足後:右後足上
CH10:-2677,CH7:-2677
CH11:533,CH8:-1067
CH12:0,CH9:-1067

基本ポジション(4/4)
左前足下:右前足上
CH4:2677,CH1:2677
CH5:0,CH2:533
CH6:0,CH3:533
左後足上:右後足下
CH10:-2677,CH7:-2677
CH11:-533,CH8:0
CH12:-533,CH9:0

その結果、以前の足下部でのトロットよりも高速が得られ、歩容も安定し、長脚を生かしたトロットモーションが完成した。さらなる高速化をめざして歩幅の検討を行ったが、533⇒711の方が若干早くなるが若干ブレがでる。

1)高速化をめざして歩幅の検討を行ったが、533A⇒幅大:711Bの方が若干早くなるが若干ブレがでる。
2)533Aでspeedを5、7、10で動作させると、動作は7,10とspeedを遅くするとより安定するが、走行スピードは低下する。
3)711Bでspeedを5、6、7で動作させると、遅い6では若干不安定に、7ではつっかえて転倒した。
以上の検討結果から、歩幅は533Aでspeedは5を基本として、とりあえず、スラローム、後退、回転の基本モーションを作成することとした。また、足を長くしたことから、転倒からの起上モーションの作成が容易になったので、起上モーションも作成することとした。

(4)基本モーションの作成

・後退UHスラロームA:若干つっかえるので検討の余地あり
・旋回縦左H6+30:角度小と大の2段階
・旋回縦右H6+30:角度小と大の2段階
・起上:上向き、左右横向き、いずれでも起上が可能

(5)高位(H)での基本モーション動画

・前進UH(トロット:速歩 はやあし):側体歩よりリズミカルで小走りに近い移動(右後足と左前足⇒右前足と左後足を繰り返し、対角線上の2本の足を同時に前に出す移動方法)の基本モーションがほぼ完成したので、ビデオ撮影した。

はじめにトロット(4.5mを約9秒)。第27回ROBO-ONEの予選4.5mで1位のFrosty(4.16秒)には及ばないが、2位のHAUSER(11.81秒)、3位のChromkid(11.99秒)より速い。スラロームも利いている。

歩行速度は足の長さが長いほど有利。因みに、「BLACK TIGER NEO」の脚長は25pで、第21回ROBO-ONE(2012.9.2〜3)予選4.5mでの記録は10位(15.72秒)。「BLACK TIGER L44」の脚長は19.5pで9秒。

ほかに、左右横移動、左右2段階旋回、後退、開脚前進・後退、起上(左右横向き及び上向きから)のモーション。



参考*BT-L44:低姿勢のモーション



新型変則5脚ロボットの製作 Part 1「BT-L5」
新型変則5脚ロボットの製作 Part 2「BT-L15」
新型変則5脚ロボットの製作 Part 3「BT-L45」
新型4脚ロボットの製作 Part 1「BT-L44」
新型4脚ロボットの製作 Part 2「BT-L44」
新型4脚ロボットの製作 Part 3「BT-L44」

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