マイロボット「BLACK TIGER」の製作 Part 5

新型機「BLACK TIGER NEO」が稼動して競技会への主力機とする一方自律機能を強化して自律バトル対応機として注力している。一方、「BLACK TIGER」はKHRスタンダード機(KRS-2350HV 4個換装)として位置づけて競技会へ参加してきたが、RCB-3HVを搭載したKHR-2HVの運動性能に劣勢は否めなかった。

メインボードをRCB-1HVからRCB-3HVに交換するに伴い、KHR-1を基本構造としている「BLACK TIGER 5」を全面的に見直し、足構造を改造して「BLACK TIGER 7」を製作したが、運動性能がいま一つ向上しない。ちなみに「BLACK TIGER 6」はKHR-1ベースへの旋回軸ユニット搭載型を試行したが、重量UPのため「BLACK TIGER 5」へ戻した。

「BLACK TIGER 8」では、運動性能向上を目的として足構造をIKT-1で試作したことのあるKHR-2タイプに変更とすることとした(ほかは「BLACK TIGER 7」と同じ)。また、自律バトル機能搭載を目的とした。


1.「BLACK TIGER 8」の基本コンセプト

(1)サッカー、バトルなど万能型、ハイトルクサーボ4個換装したSRC機(ROBO-ONE規格準拠)
(2)全体デザインは「BLACK TIGER」を踏襲。
(3)メインボードはRCB-3HV搭載。
(4)ジャイロセンサーはピッチ軸、ロール軸に搭載。本体の加速度センサーなし。
(5)コントロールボードはMANOIセンサーボード搭載(加速度センサー、小型超音波センサー、PSDセンサーなどを接続して自律バトル対応とする)。
(6)胴体フレームはKRS-2350HV換装のためイトーレイネツ製を使用。
(7) 足ヨー軸、胴体ヨー軸なし、全体で18軸。
(8)足構造はKHR-2タイプ(屈伸が容易な構造、両面起き上がりが可能な構造)、サーボ配置はKHR-2と同じ。
(9)KRS-2350HV換装4個(足首2:歩行強化、足付け根ロール軸2:横移動・攻撃力強化)。
(10)サーボアームは樹脂製アームを使用して軽量化。
(11)足底はバスタブソール(ROBO-ONE準拠)
(12)電池はLipo、カウルで胴体前面に搭載。KHR-2と外見はほとんど同じ。


2.「BLACK TIGER 8」Channel配置

「BLACK TIGER 8」Channel配置 は「KHR-2」の配置を踏襲した。KRS-2350HVの換装部位は、屈伸などで荷重と動作範囲が大きい足首に2個と横移動・攻撃力強化のために足付け根ロール軸に各2個、計4個とした。


3.「BLACK TIGER 8」組立

KHR-2タイプの足構造の組み立ては、以下の「マイロボットIKT-1の製作 Part 3(2)IKT-1の足の組替え 2」を踏襲して作成した。

SC-78X-A,SC-78X-B及びサーボアーム700Aのベースでかぎ型のKHR-2タイプの足を製作した。固定のためにφ2x10mmのネジを準備した。



SC-78X-Bにネジ穴をハンドドリルで開けた。ベースを挟んでフレームをネジで固定した。ビスクロでサーボを取り付けた。これでパーツが完成した。なお、「BLACK TIGER 8」では下側のサーボにはKRS-2350 HVを用いた。





「BLACK TIGER 8」足構造KHR-2(2350HV×4) 2008.10



4.KHR-2サンプルモーションの移設

KHR-2HVにはサンプルモーションが整備されているので、これをKHR-2と同じ足構造に改造した「BLACK TIGER 8」への応用を試みた。

1)移設方法

KHR-2のサンプルモーションはRCV-3J用に作成されている。「BLACK TIGER 8」はRCB-3HV(1.1a)。

RCB-3Jのホームポジションのサーボはすべて0に設定されている。一方、「BLACK TIGER」RCB-3はTrimポジションでサーボをすべて0に設定しており、ホームポジションでは各サーボがホームポジションの値をそれぞれ反映している。

したがって、KHR-2のサンプルモーションに「BLACK TIGER」RCB-3のホームポジションの値をLINK機能で加えてやれば、RCB-3へ変換可能となる。

KHR-2のサンプルモーションを「BLACK TIGER」RCB-3HVに移行変換したところ、非常にうまくモーションが再現できることが分かった。KHR-2のサンプルモーションは実によくできている。種類も多い。ただ、ジャイロセンサーを2個搭載した方がよさそう。

KHR-2の足構造は従来から検討してきた「BLACK TIGER」の足構造の中では最も機能的。可動範囲が大きく、荷重が膝に掛らないので安定した移動が可能。設計者の吉村さんは流石。

2)公開されているKHR-2のサンプルモーションは以下のとおり。

@近藤科学のホームページの テクニカルガイドサンプルモーションKHR-2HV
■ KHR2HVSP2.EXEサッカー対応モーション(2006年11月01日)26モーション

AROBOSPOTのモーション配信サービス
■バンブーブリッジサッカーモーションパッケージ(2006年12月12日)8モーション
■バンブーブリッジサッカーモーションパッケージ02(2007年4月22日)10モーション
■KHR-2HV サッカー対応モーション第二弾(2008年2月7日)26モーション


5.自律機能搭載

目標はSRCクラス(キットのサーボ5個換装改造機SRC)のプロポ操縦機に自律バトルで勝利すること。

コントロールボードはMANOIセンサーボード、3軸加速度センサー(自動起上り用)、PSDセンサー+小型超音波センサーの複合センサーシステム。

MANOIセンサーボードは、センサー32個、合計750mAまで接続が可能であるが、PSDセンサーは1個150mAで約600mA、小型超音波センサーは1個30mA程度で、補助電源ボードなしで十分動作可能なシステムとする。

センサーなどの設置場所は、センサーの性能、配線の難易、モーションへの影響、感知への影響を考慮して設置した。

(1)コントロールボード
背面のRCB-3HVのとなりのスペースに設置。

(2)3軸加速度センサー
水平に設置する必要があるので、KHR-1の胴体内に両面テープで設置。

(3)センサーシステム

0)基本コンセプト
・MANOIセンサーボードのみ(合計750mA・補助電源なし)でシステムを構成
・PSDセンサー5個と小型超音波(USW)センサーの複合システムも試行
・ビーチフラッグ、バトルなどを想定した万能型システム
・運動性能を損なわないようにセンサーを設置

1)PSDシステム

案1フラッグ:PSDのみ
・左右腕横PSD各1個
・左右腕前PSD各1個
・胴体後方PSD1個*
合計PSD5個
ポイント:左右の攻撃○、前方の捕捉△、後方の捕捉△
総合評価(△):PSDのみのオーソドックス型、全体的に捕捉が弱い。
留意点:*胴体後方PSDの設置場所に適当なところがない。

案2フラッグ:PSDのみ
左右腕横PSD各1個
左右足前PSD各1個
胴体後方PSD1個*
合計PSD5個
ポイント:左右の攻撃○、前方の捕捉○、後方の捕捉△
総合評価(○)PSDのみのオーソドックス型、後方の捕捉が弱い
留意点:*胴体後方PSDの設置場所に適当なところがない。

案3フラッグ:PSDのみ
左右腕横PSD各1個
左右腕前PSD各1個
胴体中央PSD1個*
胴体後方なし
合計PSD5個
ポイント:左右の攻撃○、前方の捕捉◎、後方の捕捉×
総合評価(◎)PSDによる前方強化型、フラッグは防御不要で後方は感知しない
留意点:*胴体中央PSDの設置場所に適当なところがない。

案4フラッグ:PSDのみ
左右腕横PSD各1個
左右腕前PSD各1個
胴体左右片足前面PSD1個*
胴体後方なし
合計PSD5個
ポイント:左右の攻撃○、前方の捕捉◎、後方の捕捉×
総合評価(●)PSDによる前方強化型、フラッグは防御不要で後方は感知しない
留意点:*前方の捕捉範囲の偏り、USWの胴体中央部前後追加搭載(案7、案8)が可能
ビーチフラッグには案4を採用することした。




「BLACK TIGER 8」 Beach Frug 仕様:足KHR-2化(KRS-2350HV×4) PSDセンサー5個 2008.11 

(KHR-1 HV化,KHR-2化:KHR Standard 機)

2)PSD+USWシステム
案5バトル:PSD+USW
・左右腕横PSD各1個
・左右腕前PSD各1個
・胴体中央小型超音波(狭角)1個
・胴体後方PSD1個*
合計PSD5個、超音波1個
ポイント:左右の攻撃○、前方の捕捉○+、後方の捕捉・防御△
総合評価(△)案1)のPSDのみのオーソドックス型に超音波センサー(狭角)で前方強化
留意点:*胴体後方PSDの設置場所に適当なところがない。

案6バトル:PSD+USW
・左右腕横PSD各1個
・左右腕前PSD各1個
・胴体中央PSD1個*
・胴体後方超音波(広角)1個**
合計PSD5個、超音波1個
ポイント:左右の攻撃○、前方の捕捉◎、後方の捕捉・防御△+
総合評価(○)案3)のPSDによる前方強化型、後方は超音波センサー(広角)で防御
留意点:*胴体中央PSD1個は設置場所がないが、左右の足の上部前面(案7)なら設置可能。**胴体後方超音波(広角)1個は設置場所がないが、台を取り付けその上に設置することなどを考えるべき。

案7バトル:PSD+USW
・左右腕横PSD各1個
・左右腕前PSD各1個
・胴体左右片足前面PSD1個
・胴体後方超音波(広角)1個*
合計PSD5個、超音波1個
ポイント:左右の攻撃○、前方の捕捉◎、後方の捕捉・防御△+
総合評価(●)PSDによる前方強化型、後方は超音波センサー(広角)で防御
留意点:*胴体後方超音波(広角)1個は設置場所がないが、台を取り付けその上に設置することなどを考えるべき。フラッグ案4)のPSDセンサー配置にUSWを加えたシステムとなっている。

案8バトル:PSD+USW
・左右腕横PSD各1個
・左右腕前PSD各1個
・胴体左右片足前面PSD1個
・胴体後方超音波(狭角)1個
・胴体後方超音波(広角)1個*
合計PSD5個、超音波2個
ポイント:左右の攻撃○、前方の捕捉◎、後方の捕捉・防御△+
総合評価(◎)PSD、USWによる前方強化型、後方は超音波センサー(広角)で防御
留意点:*胴体後方超音波(広角)1個は設置場所がないが、台を取り付けその上に設置することなどを考えるべき。USWが2個になり電源も限界に近くなりシステムも複雑化する。

(4)センサールール

●ビーチフラッグ基本スキーム
@状況1:PSD2個or小型超音波センサーで起き上がり⇒旋回⇒前進(フラッグに接近)⇒ジャンプ状況2へ。
A状況2:起き上がり、攻撃、捕捉、探索の順にセンサールール(ビーチフラッグモード) を設定⇒ジャンプ状況3へ
B状況3:起き上がり、攻撃、捕捉、探索の順にセンサールール(ビーチフラッグモード) を設定⇒ジャンプ状況2へ
注)旋回、前進の途中で転倒した場合には、状況2へジャンプして起き上がりが起動して、動作継続が可能なシステムとなっている。転倒せずにできるだけ正確にフラッグに接近できるかが勝敗のポイント。

●バトルの基本スキーム
@状況1:PSD2個or小型超音波センサーで礼⇒前進(相手に接近)⇒ジャンプ状況2へ。
A状況2:起上、攻撃、捕捉、探索の順にセンサールール(バトルモード) を設定⇒ジャンプ状況3へ
B状況3:起上、攻撃、捕捉、探索の順にセンサールール(バトルモード) を設定⇒ジャンプ状況2へ
注)側面で捕捉した場合の必殺攻撃、前面で捕捉した場合の必殺攻撃モーション、前面で捕捉した場合に横からの攻撃のための旋回モーションの正確さなどが勝敗のポイント。


6.自律ビーチフラッグシステム

(1)ビーチフラッグ用モーション作成。
@起き上がり(両面起き上がり) A前進(スタート時接近用) B前進(捕捉時接近用)   C横移動(スタート時接近用)   D右横移動(捕捉時接近用)   E左横移動(捕捉時接近用)   F左旋回30°(探索用)     G旋回90°(スタート時)    H旋回180°(スタート時)     G右前方攻撃(+前廻し)      H左前方攻撃(+前廻し)     I右横攻撃(+前廻し)      J左横攻撃(+前廻し)

(2)ビーチフラッグセンサールールF1作成。
センサー設定:転倒上向0〜1200、転倒下向2600〜4095、近中接1200〜4095、捕捉500〜1199、探索0〜499。設定値はBTNを踏襲したが、攻撃の近接1800〜4095、中接1200〜1799は分けずに近中接1200〜4095とした。また、攻撃後の回避モーションはなし。

(3)ビーチフラッグセンサールールF2実地試験
RoboSpotのサッカーコートで試験した結果と修正部分は以下のとおり
@スタート時の腕横のセンサーの感度をさげる。1200〜4095⇒1800〜4095にしたところ誤作動が少なくなった。スタート時の左右2通りは実行可能。
Aスタート時の旋回は実際にはM19旋回3(左)3回90Kが180°、M21旋回4(左)3回180Kが1回で90°であった。⇒M19旋回3(左)3回180K、M21旋回4(左)1回90Kにしたところ旋回の精度が上昇した。
Bスタート時の歩数を前進10歩、横移動10歩では短い。⇒前進15歩、横移動15歩にしたら精度が上昇した。
Cスタート時の横移動は方向が安定しない。⇒横移動を中止し、前進2回で旋回を2通りにした。
D転倒上向0〜1200、転倒下向2600〜4095⇒転倒上向0〜1100、転倒下向3000〜4095に修正。
E前方近中接1200〜4095は目標に届かない。⇒前方近中接1800〜4095(左右横近中接1200〜4095)。
F捕捉500〜1199では捕捉距離が短い。⇒捕捉400〜1199または400〜1179に修正。
G捕捉の修正に伴ない探索0〜499⇒探索0〜399に修正。
Hフラッグが前回より細くなっており、少し距離があると捕捉ができない。⇒右横30のPSDセンサーを右足前方に移設(前方の感知を面で捉えるべく強化)。
I前方攻撃ではフラッグを倒せない。⇒攻撃に回しを入れる。
Jかなりな頻度で起上モーションが再生される。原因は不明。ゲーム進行に障害とはならないが再生を防止する必要がある。
Kコーナーにより旋回の状況が異なる。⇒Cのとおり旋回を2通り準備する。
L前方攻撃がループになる。⇒攻撃モーションのあとに横移動(1歩)を入れる。

(4)ビーチフラッグセンサールールとモーションの修正
@センサーを前方に集中とともにセンサーNo.を変更⇒左横No.31(同じ)、左腕前No.30(←29)、左足前No.29(←27)、右足前No.28(←なし)、右腕前No.27(←28)、右腕横ははずす。
A前方攻撃に回しモーションを加えた。
B前方攻撃がループになるのを防止するために攻撃後に移動モーションを追加。⇒左手の攻撃の場合は左1歩、右手の攻撃の場合は右1歩。
C右横のセンサーがなくなったのでスタートは1パターンのみとなった。スタート時の旋回パターンを2とおり作成しておき実地試験で判断して使用。
D起上モーションの誤作動は原因が不明で対応なし、RCB-3に加速度センサーを付けて屈足起上モーションが立っている時は動作しないようするしか方法がない。(加速度センサーを取り付ける端子が破損しているため対不可、修理が必要)。
以上を修正したセンサールールF5を作成した。

(5)ビーチフラッグセンサールールF5試験とモーションの修正
@左拳に回しを入れた。
A前拳を両手回しにしたが、手は横まで、足を少しかがめて安定を図る。
B前拳後の1歩移動をすべて同じ方向にした。
Cスタート方式を変えた3通りF6シリーズ(旋回3で3回180°前進、旋回4で2回180°前進、旋回4で1回90°横移動)を作成。

7.ビーチフラッグセンサールールF6の大会の結果と考察

(1)エキスパート部門、2試合、4回のトライ。1回戦の前半はセンサーが反応せずスタートにとまどる。再度スタートするも途中でフリーズ。後半もスタートにとまどり、スタートするも途中でフリーズ。2回戦の前半は順調にスタートしてPSDの捕捉範囲に入り、少しとまどるも倒すことに成功、41.27秒。後半も順調にスタートしたが、捕捉をはずし途中でフリーズ。この間、起上りモーションを何度も誤作動。

(2)スタートが動作しない原因は、直前にスイッチONからOFFにしてONを短時間に行うことがセンサールールの誤作動の原因になると考えられる。2回戦の前にセンサールールを再度loadingした。

(3)途中で起上りモーションが誤作動する原因は不明。加速度センサーの誤作動の可能性があるが、機体をゆすってみても倒れた状態の値は検出できなかった。モーション終了後静止時間を長くしても効果は期待できない。解決方法としては、@RCB-3に加速度センサーを取り付け、起上りモーション動作時にRCB-3の加速度センサーで再度判定させるダブルチェック方式する。自律バトルでは実証済み。A加速度センサーによる起上り判定をやめてPSDセンサーによる起上り判定方式に変更する。ただし、前面に2個、後面に2個のPSDセンサーが必要。

(4)モーションがループになる現象はなかった。第1モーションの後に1歩の移動を入れたことで回避された模様。

(5)途中でのフリーズの原因は不明。フリーズ防止のために探索のセンサー感知を左横と右前の2か所にしておいたが防止できなかった。おそらくセンサーシステムは生きているのでバトルの場合は目標が感知範囲に入れば動作再開する。

(6)屈足両側起上りモーションにしたが、起き上がった時に若干方向がずれるので、下向き起き上がりモーションにした方が精度があがる。

(7)探索旋回の角度が大きすぎた。40〜45°位あったので30°程度の方が捕捉し易そう。

(8)当初の予想どおり、最初の起き上がり・旋回・接近動作で、PSDの感知範囲内に入れるかどうかがポイントとなった。競技会毎に床の状況が変わり、また前半と後半でコートチェンジがあるので、正確な旋回、前進モーションが必要。

(9)次回も同じ条件であれば、優勝には20〜25秒をコンスタントに出せるセンサーシステム、モーション、機体が必要。


マイロボット「BLACK TIGER 」の製作 Part 1
マイロボット「BLACK TIGER 」の製作 Part 2
マイロボット「BLACK TIGER 」の製作 Part 3
マイロボット「BLACK TIGER 」の製作 Part 4
マイロボット「BLACK TIGER 」の製作 Part 6


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