マイロボット 「BLACK TIGER NEO 」 の製作 Part 1


「KHR-1」をベースにした改造機体「BLACK TIGER 3」ではパワーと速さの限界があることから、新たにオリジナルロボット「BLACK TIGER NEO」を製作することとした。

1.新オリジナルロボット製作の基本的考え方
(1)製作期間を1年程度とし、長期計画で時間をかけて、設計、製作、検証を実施。(長期計画)
(2)3台目の本機を最終のオリジナルロボットとして以後は本機をベースに改良を継続。(最終機体)
(3)全体デザインは「BLACK TIGER」を踏襲(BLACK TIGER NEO)、ロボットはかっこよくなければならない。(デザイン重視)
(4)基本的に既製部品の組み合わせにより作成。(既製部品)
(5)必要なトルク、旋回角度、スピードを勘案して、各部に適切な(ハイトルク)サーボを採用。各サーボのゲイン選択による省エネ。(省重量、省電力)
(6)運動性能を優先して脚部設計を重視。安定性の高い低重心。(運動性重視)
(7)新規センサーの取り込み。(自律機能重視)
(8)安全性の高い充電池を採用。(安全性重視)
(9)最終重量(充電池込み)は2.0〜2.5kg(ROBO-ONE 2kg超クラス)を想定。(至適重量)
(10)最終目標は「ROBO-ONE best 8」(最終目標)

2.新オリジナルロボット製作の進め方
(1)第一段階として胴体を含めた脚部分の設計、製作、検証を実施。
(2)第二段階として腕を含めた全体的な設計、製作、検証を実施。
(3)充電池については最終的に安全性を重視し、重量、持続時間(5分以上)などを考慮して決定。

3.BLACK TIGER NEO 仕様(現段階での仕様で順次改訂の予定)

4.機体の製作

(1)CPU、サーボ、フレーム、アームなどの調達

「BLACK TIGER NEO」の部品がようやくそろった。腕部分は在庫のサーボとアームで組み立てるので、これで全体がほぼ組み立て可能となった。RCB-3HV、KRS-4014x12、KRS-4013x6、既製部品で製作することとしたのでKRS-4000HVシリーズ用アーム等々、相当な出費になったが、1年間楽しめれば良しとしよう。



(2)部品の塗装

部品の塗装を行なった。



(3)胴体の組み立て

SC-4000BFを組み立てて、ボードカバーセット(ラージサイズ)のPCBベースを固定してから、RCB-3HVを取り付けた。



(4)直交軸の組み立て

足首と足の付け根に取り付けるための直交軸を組み立てた。KRS4000シリーズ用直交ブラケット:SC-4000X1 で直交軸を組み立てた。サーボはKRS4014HV。アルミハイトサーボホーンにはフリクションスペーサー4000Aを装着。重量は1組176g。足首用に2組、足の付け根用に2組の計4組を作成。



(5)足首の組み立て

足首部分の作成のため、直交軸にバスタブソールSC用アダプター:SC-4000AD-S を取り付けてからKHR用バスタブソールを取り付けた。これで足首部分が完成した。重量は218g。



(6)膝の組み立て

KRS4000シリーズ用ツインアーム:SC-4000ARM-T で膝部分を組み立てた。スピードを高めるためにダブルサーボとし、サーボはKRS4013HVを採用。アルミハイトサーボホーンにはフリクションスペーサー4000Aを装着。重量は1組168g。2組作成した。



(7)レッグアーム取り付け

KRS4000シリーズ用ツインアーム:SC-4000ARM-T で組み立てた膝部分の上下に、KRS4000シリーズ用レッグプレート:SC-4000L1を取り付けた。重量は1組214g。



(8)胴体部分の組み立て

胴体部分に旋回軸用サーボKRS-4014HVをKRS4000シリーズ用ブラケット:SC-4000 B1で取り付けた。また、肩用サーボを胴体フレームに直接取り付けた。胴体フレームとサーボ4個で重量は368g。なお、取り外したRVB-3HVとボードカバーセットの重量は50gであった。



旋回軸サーボに直交軸を取り付けた。これで胴体部分が完成した。取り外したRVB-3HVとボードカバーセットを取り付けた。重量は770gとなった。あとは膝部分と足首部分を連結すれば腕部分を除いて完成する。



(9)ボディーフレームの製作

ボディーフレームとして、KHR-1旋回軸ユニットセットのボディフレーム「HR-016ボディーフレームF_a」(前面)「HR-017ボディーフレームB_a」(背面)を胴体部分に使用することとした。「HR-017ボディーフレームB_a」の横幅はピタリと左右サーボホーンの表面までの高さと一致する。糸鋸でサーボホーンの穴を開けた。また、フレームの側面下に2箇所ネジ穴を開けてフレームをサーボに固定できるようにした。これで機体が強化できて電池収納のスペースも確保できた。



(11)ボディフレームの取り付け

ボディーフレームを黒に塗装した。



「HR-016ボディーフレームF_a」(前面)にLED HEADを固定する台を取り付けた。



ボディーに「HR-017ボディーフレームB_a」(背面)を取り付けた。



また、「HR-016ボディーフレームF_a」(前面)を取り付けた。ボディーフレーム(前面)と(背面)を取り付けた重量は760g。



さらにRCB-3とカバーを背面に取り付けた。重量は810gとなった。



ボディーの肩の付け根のサーボにアームSC-4000ARMを取り付けた。また、前面にフロントカバーを取り付けた。胴体部分の総重量は840g。



(11)腕の組み立て

腕の構造は「BLACK TIGER」と同じであるが、肩サーボにはパワーとスピードアップのためにKRS-4013HVを使用した。また、肘と手首にはKRS-788HVを使用したが、KRS-788HVはいずれKRS-2350HV、KRS-4013,4014にパワーアップを図る。手先はTIGERの爪をイメージして塗装なし。重量は片腕208g。

「BLACK TIGER」の腕は肩、肘、手首にサーボを配置し、肘のサーボは角度を90°曲げた変則となっているが、人の腕の構造を模倣している。一般的な肘を旋回軸とする構造もあるが、実質は3軸から2軸となる上に、モーションの作成で旋回軸の能力を十分に発揮することは難しいと判断した。



(12)脚の組み立て

膝部分と足元部分を接続して足を組み立てた。重量は片足434g。



LED HEADの重量は37g。電池Ni-MH10.8V800mAhの重量は122g。機体の重量=胴体部分840g+足部分434gx2+腕部分208gx2+LED HEAD37g=2161g(+電池122g=2283g)

(13)機体の組み立て

胴体部分に腕、脚部分を取り付けた。全長は40cmとなった。全重量は電池込みで約2300g。第11回ROBO-ONEの規格に合致するか脚の長さ、腕の長さ、足裏の長さを測定し マイロボット「BLACK TIGER NEO」の規格 をまとめた。3kg以下の中量級の規格に合致することを確認した。



脚の長さは「BLACK TIGER 3」とほぼ同じ長さ22cmであるが、旋回軸を加えたことで足長に見える。ただ、足裏の規格からこれ以上に足を短くは出来ない。全長(高さ)は40cmなので、胴体部分が長くなっているということか。腕の長さも「BLACK TIGER 3」と同じ構造でほぼ同じ長さ。腕が短く見える。とりあえず「BLACK TIGER NEO」Prototype が完成した。

(14)基本ポジションの設定

各サーボをRCB-3に接続した。HTH3を起動してトリムの調整と基本ポジションの設定をした。基本ポジションは両手を左右に直行、両足も直行とした。スタートアップモーションは重心が中央になるようにとりあえず作成した。



(15)足首部分の修正

バスタブソールSC用アダプター:SC-4000AD-S への直交軸の取り付け位置を中央寄りの端へ移動した。足底が外側へ出る分、安定性の向上が期待できそう。



(16)シリアルサーボへの設定変更と基本姿勢の作成

KRS-4014HV, KRS-4013HVについてはPMW方式からシリアルサーボに設定を変更した。これでサーボのゲイン変更が容易になる。

ホームポジション


移動基本姿勢


座姿勢


(17)サーボの組換えとチャンネル配置の変更

膝のパワーアップと調整を容易にするため、膝の部分のダブルサーボ左右4個をKRS-4013HVからKRS-4014HVに変更した。これで足の部分はKRS-4014HVでまとめ、上半身部分、足旋回軸をKRS-4013HV、腕をKRS-4013HVとKRS-788HVでまとめた。また、RCB-3へのコードとコネクタの接続を容易にするため、チャンネル配置を左右逆にした。「 BLACK TIGER NEO Channnel配置」 を掲載した。モーションがまだ不完全な今の段階で気になる箇所は修正しておくこととした。このため、ホームポジション、スタートアップポジション、起上がりモーションなどを再度作り直した。

(18)旋回軸の移設

旋回角度が大きく取れないので旋回軸を後方へ移した。



足が大きく開けるようになった。座禅の姿勢と開脚すわりも可能。



「BLACK TIGER NEO」旋回軸移動 2007.2 


今回、旋回軸の位置を後方へ移したが、同様な直交軸使用の機体について旋回軸の位置を見ると、
後方(旋回角度が大きく旋回が容易):キングカイザー、R-Blue
前方(機体を支えるのに無理がない):メタリックファイター、マジンガー
ただ、旋回軸の位置を変えると、重心の位置が変わり、移動時の基本姿勢が変わる。

キングカイザーでは足首の直交軸も足底の固定位置が後方になっている。これにより「てこ」の原理により足底が地面に強く密着するように考えられている。

「BLACK TIGER NEO」では足底のバスタブソールの前後が短いので、直交軸の固定位置を後方へ移動させることは難しい。足首の直交軸はそのままとしたが、今後、改良も一考。ただ、自重に耐えて反らない程度の足裏の強度が必要。

(19)旋回軸と肩アーム交換

旋回角度が大きく取れないので旋回軸を後方へ移したが、そのため長めのアームSC-4000ARM-L を使用する必要がなくなったので、短めのアームSC-4000ARM に交換した。アームの高さ3cmから2cmにしたことで身長が1cm低くなった。重心が低くなったことでサーボへの負担も少なくなる。



腕が胴体に近すぎるので、肩のアームを短いSC-4000ARM から長めのアームSC-4000ARM-L に交換した。ROBO-ONRの規定による測定では腕の長さは変わらないが、横方向のリーチが1cm 長くなった。



アームの交換後に写真をとったが、肩幅が広くなって逞しくなった。

「BLACK TIGER NEO」旋回軸と肩アーム交換 2007.2 


(20)RCB-3のアップデート

RCB-3アップデートの主な内容は、1)SET,CMPの通過時間の短縮によるモーションの高速化、2)モーションシナリオへのジャンプ、呼び出し、3)ポーズ間を任意の数で分割したポーズが挿入可能な分割機能の追加など。

アップデートしたRCB-3を機体に取り付け再設定した。@HTH3をダウンロード、Aオプション設定(シリアルサーボの設定、ICS機能チェック)、Aトリム設定、Bホームポジション設定、Cスタートアップモーション設定まで。

(21)足旋回軸へのアームサポーター4000Aの取り付け

足の旋回軸を補強するため、アームサポーター4000A(2個入り):適合機種KRS-4000シリーズKHR-1HV(肩用)を入手して取り付けた。サーボはブラケットSC-4000 B1で取り付けてあるので、アームサポーターの片側はブラケットの厚みだけナイフで削り取りはめ込んだ。

いままではアルミハイトサーボホーンにフリクションスペーサー4000Aを装着しただけであったが、これに加えてサーボアームを面で受けるようになり旋回軸の剛性が向上した。



「BLACK TIGER NEO」足旋回軸アームサポーター4000A補強 2007.3 


「BLACK TIGER NEO」で最も構造的に弱い部分であった足の旋回軸の付け根部分をアームサポーター4000Aで補強して、当面の機体の改良を終えた。

組立後に改良した部分は @バスタブソールへの足直行軸サーボの取り付け位置を内側へ移動(足面積の有効利用:重心受け止め面積の拡大)A旋回軸の取り付け位置を前部のサーボから後部のサーボへ移動(旋回角度の拡大、重心が後方へ移動し安定性増)B足旋回軸取り付けアームを短いアームに変更(重心を1cm低下)C腕取り付けアームを長いアームに変更(腕の自由度アップ)DRCB-3のバージョンアップ(コントロール機能アップ)E足の旋回軸の付け根部分をアームサポーター4000Aで補強(足旋回軸の剛性アップ)。

(22)充電池の選定

ロボット王国から、 Intellect(インテレクト)社製 の8C の電流を流せるニッケル水素電池KHR-1HV用電池(IB750KH-T) (120g)が発売された。

対応機種:KHR-1HV / 2HV及び近藤科学のHV対応サーボモータ。動力用のセルを使用し大電流(8C)を流せハイパワー。近藤科学のHVシリーズのサーボモータ対応のニッケル水素バッテリー。長時間駆動が可能な大容量タイプ。電源電圧:10.8V(9セル) 電流容量:750mAh 。



1個入手して「BLACK TIGER NEO」の電源として使用できるか調べた。最初に充電した後、@足踏みと前進を間歇的に行なわせたところ18〜19分間稼動させることができた。連続稼動させても9分は持続可能と考えられる。へたりもないようだ。再充電した後、A上向きからの起き上がり(足のみでの起き上がり)を間歇的に行なわせたところ11〜12分間稼動させることができた。連続稼動させても5分は持続可能と考えられる。説明書には「ご使用に際して」として「このバッテリーは最初の使用時に本来の性能を発揮出来ない場合がありますので、ご使用前に慣らしを行って下さい。」の記述があった。したがって、この性能は最低限と考えられる。以上、不十分な稼動試験ではあるが競技会などで5分間はフル稼動が可能と判断した。

リポは安全性の不安があるので、いずれはより安全性の高いリチウム水素電池に移行するにしても、当面は安全性の高い電源としてこれを「BLACK TIGER NEO」に採用することとした。重量を測定しところ 120g であった。これでようやく当初からの懸案であった安全性の高い電源の「BLACK TIGER NEO」への搭載が実現した。

なお、付属の使用上の注意書きで気がついた点は、@充電はバッテリーの温度が20〜40℃行なうこと Aバッテリーを放電する場合は完全放電しないこと Bニッケル水素バッテリー専用充電器で充電電流値が設定可能な場合は充電電流を1A 以下に設定することなど。

(23)足裏に滑り止めを装着

バスタブソールの足裏にゴムパッドを装着した。「着替式パンチキットL 」6サイズの穴があけられるものを入手した。バスタブソールの穴のサイズは8mmであるが、7mmのパンチで打ち抜いたものがよさそう。ゴムはネオセル皮付ST付約1.5x300x300mmを購入した。いずれも東急ハンズ(渋谷:皮革6A,ゴム素材B1A,両面テープ5A/B1A,模型塗料7B)で入手可能。いろいろなゴム・材料で試す必要はありそう。下に木を置いて回すようにくり抜くとうまくパッドが作れる。バスタブソールの4箇所の穴に装着した。



バスタブソールの足裏の4箇所のホールに張ってあるゴムが磨耗してきたので新しいゴムに張り替えた。張り替えた時点では前回と同じく今回も横移動が再現できなくなったが、何度かモーションを繰り返すとゴムが馴染んできて再現できることが分かった。足裏のゴムは微妙、交換時期を適切に選ぶ必要がある。競技会の直前は避けよう。

ゴムの大きさは、当初は少しゆとりのある小さめの7mmにしていたが、最近は穴にぴったりの8mmにしている。作成時に多少周囲が凸凹になるので、7mmの方が横移動の正確さ(曲がりの無さ)の再現性が高いかも知れない。

(24)今後の方針

機体のハード部分の改良はほぼ終えたので、今後は、モーション作成を含めてソフト部分を強化する。@RCB-3についてはバージョンアップを既に終えているので能力を十分に発揮する。いかに高速の移動モーションを作成するか。サーボのゲインの調整・切替がポイント。A加速度センサー(RAS-1)とジャイロセンサー(KRG-2x2)を搭載する。Bほかに自律機能を高めるために磁気センサーなどの方位センサーを搭載したい。

マイロボット「BLACK TIGER NEO」の製作 Part 2
マイロボット「BLACK TIGER NEO」の製作 Part 3
マイロボット「BLACK TIGER NEO」の製作 Part 4
マイロボット「BLACK TIGER NEO」の製作 Part 5
マイロボット「BLACK TIGER NEO」の製作 Part 6
マイロボット「BLACK TIGER NEO」の製作 Part 7


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