マイロボット 「BLACK TIGER NEO 」 の製作 Part 7


自律バトル能力アップのために3.3V電源ボードを製作して搭載できるPSDセンサー数を増やして、4方向9個を配置し、さらに小型超音波センサーの搭載を検討するなどしてきた。しかし、PSDセンサーや小型超音波センサーには同方向に複数個設置した場合、干渉が生じることも分かった。そこで、PSDセンサーと小型超音波センサーを組み合わせたハイブリッドセンサーシステムを搭載することとした。

1.ハイブリッドセンサーシステムの目的

PSDセンサーは15cm〜80cmの捕捉範囲が自律バトルには適しているので使い込んできたが、PSDは指向性が高く、位置を正確に捕捉できるというのが長所である反面、捕捉範囲が狭いという欠点があった。実戦では特に、攻撃可能な至近距離の真前にあるいは真横に目標があっても捕らえられないことが多く、この欠点を補うために、PSDを同方向に平行して複数配置する方法を試行したが、干渉が生じるため、個数を増やすことで必ずしも捕捉範囲を広くできないことが分かった。このため確実な捕捉システムが必要となっていた。

高性能の小型超音波センサーMX001 LV-MaxSonar EZ0〜4は、感知範囲が広角から狭角まで5種類あり、目的に応じて使い分けが可能であるうえ、従来の発信機と受信機が一体となり非常にコンパクトな大きさである。また、近いほど出力値が小さく、遠いほど大きくなっており、近距離では正確な距離測定が可能な仕組みとなっている。電源も3.3V〜5Vまで使用でき、出力もデジタル、アナログなど汎用性が高い仕様となっている。

小型超音波センサーは複数を使用するに当たっては干渉が生じる可能性があるが、4方向に使用して見た結果、近距離では特段の問題は生じないことが分かった。4個を前後、左右に各1個ずつ配置して感知させた結果は「小型超音波センサー搭載」にまとめた。この試験結果は小型超音波センサー4個のシステムはPSDセンサーシステムとほぼ同等な能力を発揮する可能性を示唆している。EZ4(狭角タイプ)は指向性がPSDと遜色ない位に高いので、捕捉・攻撃に適したセンサーといえる。EZ1,EZ2(広角)タイプは捕捉が不安定な印象があるが、PSDと比較して捕捉範囲が広い。

このようなPSDセンサーと小型超音波センサーの長所を生かし、欠点を補う目的でハイブリッドセンサーシステムを作成することとした。

2.センサーの配置

(1)PSDセンサー:左右腕横各1個、胴体前旋回軸サーボ左右各1個、胴体後サーボカバー左右各1個(縦置)の合計6個。 前後には中央に近づけてそれぞれ2個設置して、捕捉範囲を広くし確実に捕捉できるようにした。また、中央に感知した方が正確な攻撃が可能となるため。電源は胴体後サーボカバー左右各1個(縦置)は補助電源ボードから、ほか4個はすべてMANOIセンサーボードから得ている。

(2)小型超音波センサー:左右腕横各1個(EZ4:狭角)、胴体前面胴体旋回軸サーボ1個(EZ1:広角)、胴体後面中央1個(EZ2:広角)の合計4個。干渉のないように90度ずらして配置。近距離では干渉が少ないと判断した。左右には攻撃が正確になるように指向性の高い狭角のEZ4を、前後には補足範囲が広く、防御的な攻撃ができる。電源は4個すべてMANOIセンサーボードから得ている。

PSDセンサー6個と小型超音波センサー4個を接続・通電して動作試験を行ったが、フリーズは認められず、電源は十分であることが確認できた。



「BLACK TIGER NEO」ハイブリッドセンサーシステム搭載 2009.3 

(新自作機体:Open Class 機:自律バトル機能搭載)

3.自律バトルセンサールールの基本設計

●Xシリーズからの改良点
@PSDセンサーの前面4個配置を2個(足旋回軸サーボ前面)に、後面中央部の2個(縦)に配置し、PSDセンサーを中央部に集め攻撃の精度を高めた。
A捕捉のセンサー設定範囲は500〜1200に、探索のセンサー設定範囲を0〜500。誤認識の防止。
B下向起上のセンサー値2600〜4095。
C攻撃は中接攻撃1200〜1799、近接攻撃1800〜4095の2段階攻撃は堅持。
D横移動の歩数は3歩。離れすぎと競技台からの落下防止。
E旋回前拳・旋回後拳の攻撃ポース時間の延長。旋回攻撃の中止(第15回ROBO-ONE規則に準拠)。
F起上りモーションの誤作動はRCB-3へ接続した加速度センサーによるチェックで防止。

●センサールールHシリーズ基本設定
状況1:PSDセンサー2個と小型超音波センサー2個でそれぞれスタート設定(スタートの確実性を向上)。状況2へジャンプして自律バトルモードへ
状況2:転倒判定、近接攻撃、中接攻撃、捕捉接近、探索(すべてモーション実行後は状況3へジャンプ)
状況3:転倒判定、近接攻撃、中接攻撃、捕捉接近、探索(すべてモーション実行後は状況2へジャンプ)
Xシリーズの転倒により2通りの異なる戦略を自動的に相互移行する方式から戦略は1とおりのみとした。近接、中接の2段階の攻撃設定で攻撃のバリエーションができることとハイブリッド化により攻撃設定を重複できることから戦略は1とおりで十分とした。

4.ハイブリッドセンサールールの作成・組み合わせ

(1)(HP6+HS4):近接・中接・捕捉・別にそれぞれ先にPSDセンサーでその後、超音波センサーで感知させるハイブリッドセンサールール

(2)(HS4+HP6):近接・中接・捕捉・別にそれぞれ先に超音波センサーでその後、PSDセンサーで感知させるハイブリッドセンサールール

(3)(HP6)+(HS4):PSDセンサーで近接・中接・捕捉を感知させ、その後、超音波センサーで近接・中接・捕捉を感知させるハイブリッドセンサールール

(4)(HS4)+(HP6):超音波センサーで近接・中接・捕捉を感知させ、その後、PSDセンサーで近接・中接・捕捉を感知させるハイブリッドセンサールール

5.ハイブリッドセンサールール4方式の動作試験の評価と考察

(1)近接・中接・捕捉・別にそれぞれ先にPSDセンサーでその後、超音波センサーで感知させるハイブリッドセンサールール:(HP6+HS4)と先に超音波センサーでその後、PSDセンサーで感知させるハイブリッドセンサールール:(HS4+HP6)を比較すると、捕捉範囲が広い小型超音波センサーを先に感知させた方が捕捉能が向上する。

(2)ハイブリッドセンサーシステム(HP6)+(HS4)とハイブリッドセンサーシステム(HS4)+(HP6)ではPSDセンサーシステムを優先した(HP6)+(HS4)の方が正確な攻撃ができている。PSDセンサーシステム優先の方が捕捉・攻撃の正確性を反映して攻撃もヒットしている。超音波センサーは捕捉を逸した時の予備的なシステムとして後にした方がよさそう。

(3)近接・中接・捕捉毎にPSDと小型超音波センサーでそれぞれ感知させるハイブリッドシステムとPSDセンサーで近接・中接・捕捉を感知させ、その後、超音波センサーで近接・中接・捕捉を感知させるハイブリッドシステムの明確な違いは認識できなかった。どちらが優れているかは実戦で確認する。

(4)自律バトルのセンサーシステムはここしばらくはハイブリッドシステムとする。このシステムは従来のシステムと比較して、信頼性が非常に向上している。

6.ハイブリッドセンサーシステムの対実機試験

(1)ハイブリッドセンサーシステム(HP6)+(HS4)

「BLACK TIGER NEO」のハイブリッドセンサーシステムの実機との対戦試験をザウラーとROBO-SPOTで実施した。センサールールは(HP)+(HU)でPSDセンサー感知に次いで超音波センサー感知を別々に行うシステム。



PSDセンサーが感知した攻撃はやはり正確にヒットしている。ただ、重量のあるザウラーが防御すると攻撃力は限定的であるが、よいタイミングでヒットすると倒せる。超音波センサーが感知したと思われる攻撃は正確性を欠くが防御的攻撃としては効果的なタイミングで出ている。また、ハイブリッドシステムにしたことで接近戦での攻撃数が増加している。

超音波センサーの誤感知と思われる捕捉の動作が1〜2か所あったが、結果的には適度な防御動作となっている。誤感知かセンサールールの間違いか確認する必要がある。

捕捉距離の設定はほぼ適格で、捕捉範囲に目標があるとほぼ100%捕捉している。また、近接攻撃と中接攻撃が的確に動作している。ハイブリッドシステムにしたことで感知能力がUPしている。

ハイブリッドシステムではPSDセンサー、小型超音波センサーを左右、前後中央の4方向に絞ったが、8方向に分散するよりも捕捉感知能が高く、1回の45°旋回でほぼ8方向がカバーできるので、この方が捕捉効率がよい。

ハイブリッドセンサーシステムは従来のPSDセンサーのみのシステムと比較して目標の捕捉能がUPしており、攻撃が的確に出るようになっている。重量のあるオープンクラスのロボットのプロポ操縦と同等以上の自律バトル能が確認できた。実機対戦試験につきあっていただいたKENTAさんに感謝。


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