マイロボット 「BLACK TIGER NEO 」 の製作 Part 5


自律バトルに注力してきたが、MANOIセンサーボードの容量が750mAhであるため、PSDセンサーの搭載は5個が限度である。MANOIセンサーボードにはアナログセンサーポートが32あるので、これを有効に活用して自律機能の強化を図ることとした。

1.3.3V電源ボードの製作

PSDセンサーは電流を多く必要(最大150mA位)とし、MANOIセンサーボードは、接続センサーへの総電流は750mAとされている。実際にPSDセンサーを6個以上接続するとフリーズしてしまい、PSD接続の限度は5個まで。これを回避してPSDを増設するにはPSDへの3.3V電源の供給のみを別系統で行う必要がある。

3.3Vの電源基板を自作した(ROBO SPOT城間さん教示)。材料は、TA480335S、ピンヘッダ、ユニバーサル基板、9V電池用ココネクタ(いずれも秋月電子で購入)、ピンコネクタ(千石電商で購入)。

9Vの電池を電源として3.3Vに電圧を落として1Aまで供給可能。これで10個分のPSDセンサーに電流が供給可能となる見込み。



2.PSDセンサーの増設試験

自作した3.3V電源ボードにPSDセンサー1個を配線してMANOIセンサーボードに接続して動作するか試験した。

PSDセンサーへ電源ボードから給電、緑色の信号線をMANOIセンサーボードのセンサー端子の信号端子に、電源ボードのG端子から黒色のG(−)線をセンサーボードのセンサー端子のG(−)端子に接続。3.3V電源ボードに9V電池を接続。PSDセンサーの発光を確認。

MANOIセンサーボードエディタを立ち上げて、センサー表示。従来のPSDセンサー5個に加えて、追加したセンサー1個が動作し、同等の感度を確認した。



3.PSDセンサー増設場所

PSDセンサーは斜め方向に4個増設の予定。45°に設置する場所の設定が難しい。前方2個についてはラージフロントカウルの角に穴を開けて2個設置することとした。前方から丁度45°となる。



後方の2個のPSDセンサーの搭載場所をボードカバーラージの両角とした。コネクタの部分に切り込みをいれてその切り込みを押えにするとピタリと収まった。配線は外側になる。これで追加分PSDセンサー4個の搭載場所が確定した。



4.3.3V電源ボード設置場所

3.3V電源ボードはRCB-3とMANOIセンサーボードの間に設置の予定。

5.9V電池収納場所

9V電池は機体(胴体)の中に、無線の受信機のスペースに収まることを確認した。自律では無線機を使用しないので、受信機と電池を入れ替えることとした。胴体の中ならば重心への影響も少ない。


6.センサールールNoZ1の作成と動作試験

今までのPSDセンサー5個と加速度センサー1個のMANOIセンサーボードへの接続端子を変更した。PSDセンサー9個、加速度センサー1個、超音波センサー1個の接続・配線がほぼ完成し、3.3V電源ボードもRSB-3HVとMANOIセンサーボードの間に収まったし、9V電池も機体内の受信機の位置に設置し、なんとかコンパクトに設置できた。超音波センサーの感度が弱いが後日検討することとした。

PSDセンサー9個のセンサールールNoZ1を作成した。状況1をコントロール用としてPSDセンサー2個でスタートをセットした。NoZ1の各状況のルール数は31個とNoY7の17個の2倍近くに増加した。センサールールの動作試験をしたところ9個のPSDセンサーに反応して動作することを確認した。

なお、センサールールNoZ1動作時において、追加した4個分の電源供給を遮断した場合には、以前の5個のみで動作することも確認できた。これで自律バトル中に追加分に不具合が起きても従来の5個で対応可能。

また、追加した4個のセンサーに対応した新規モーションも動作することを確認した。これでPSDセンサー4個増設による自律バトル能の強化は一応完了。

一部、横移動モーションの改良の必要あり。また、広い場所での検証が必要。さらに移動モーションの確認とセンサールールの精密化。実戦でPSDセンサー5個のNoY7からどの程度自律バトル能力が強化されているか検証の必要あり。



「BLACK TIGER NEO」PSDセンサー増設 2008.7


7.小型超音波センサー( LV-MaxSonar-EZ4 )搭載

1)目的:MANOIセンサーボードに超音波センサーを接続して、少し離れた距離の捕捉に利用しようと考えていたが、近接、中接の攻撃に利用した方がよさそう。感知範囲がPSDより広いので、PSDの指向性の高さによる近接(1800〜4095)、中接(1200〜1799)の捕捉漏れを補い、特に前方と後方の防御的攻撃に利用の価値がありそう。まず、攻撃に応用した方が無難と考えた。当初想定した離れた距離の捕捉用にすると周囲の操縦者や審判など誤った目標を捕らえるリスクが高い。

PSDセンサーでは対戦相手に接近して感知範囲に入っているのに攻撃モーションが働かないことが多い。PSDセンサーの設定値は間違っていないが、指向性の高さによる捕捉漏れと考えられる。超音波センサーで補完することを検討。

2)設置場所:超音波センサーは搭載場所のゆとりと配線の容易さからラージカウルの前面に設置してみたが、当初の想定どおり転倒した時の衝撃が大きいので、カウルの下の中央の旋回軸サーボの前面に両面テープで取り付けた。配線的には良くないが、この方が転倒した時に衝撃が加わらず、見た目もスマート、また、低い位置の目標の捕捉が期待できる。



3)目標距離とセンサー値の測定

センサーと壁の距離を15〜45cmまでの5cm毎のセンサー値を10回測定して平均値を求めた。
15cm(45)20cm(52)25cm(62)30cm(67)35cm(82)40cm(112)45cm(123)

なお、攻撃の到達距離は正拳前右(25cm)、旋回前拳右(43cm)。

4)試験用センサールールの設定

センサールールは近接と中接とそれぞれの攻撃モーション・回避モーション、状況1と状況2を設定して相互にジャンプ、BTNにセンサールールをUplardして実機試験を実施した。センサー設定値は以下のとおり。

@No.A0
近接:センサー値0〜64⇒正拳右前・左横
中接:センサー値65〜120⇒旋回前拳右・左横
結果:センサー値の設定が高すぎて、背景を捕えて反応する。事前の距離による測定値と実際の感知にはかい離がある。これでは設定値が高過ぎる。

ANo.A0-2
近接:センサー値0〜45⇒正拳右前・左横
中接:センサー値46〜65⇒旋回前拳・左横
結果:背景は捕えなくなった。射程に入ると旋回前拳が出る。ただ、かなり近くても中接の旋回前拳が出る。近接の攻撃が出にくい。

BNo.AO-3
近接:センサー値0〜50⇒正拳右前・左横
中接:センサー値51〜65⇒旋回前拳・左横
結果:射程に入ると旋回前拳が出る。近くでは近接の攻撃が出るようになった。これ位が適当か。

5)総括

・超音波センサーを実機へ搭載が可能と判断した。事前の測定値と実機試験では感度の乖離が大きかった。実機での試験で距離とセンサー値を確認するとかなり正確にセンサー値を設定できる。

・EZ-4は最も指向性が高いタイプであるがほぼ正面しか感知しない。指向性は高いがPSDよりも広いので目標捕捉に適している。もう少し広い範囲を感知するタイプがよいのかは実戦での結果から判断する。

・センサールールを入れる位置はPSDセンサールールの捕捉の次で探索の前。前面のみなのでPSDの補足を目的。入れた場合と入れない場合も実戦で比較する。

・今回の実機試験の結果から、小型超音波センサーはPSDの替わりとして十分に使用できることが分かった。このセンサー(4個〜8個)でセンサールールを作成した場合、PSDセンサー(4個〜8個)の同じセンサールールよりも同等以上の性能が期待できる。また、3m位まで離れた距離までかなり正確に感知できるので、応用範囲が広まることが期待できる。

・できれば超小型センサー(8個)のみでセンサールールを作成して、PSDセンサー(8個)と比較したい。

6)小型超音波センサーまとめ
小型超音波センサーの自律バトルへの応用を検討してきたが、概ねその長所、短所が分かってきた。

MaxBotix Inc.の小型超音波センサー LV-MaxSonar-EZ1〜4の特徴(長所)は以下のとおり。

@超音波の照射範囲によりEZ0,EZ1,EZ2,EZ3,EZ4があり、目的に応じて適宜選択可能。 EZ4が最も照射範囲が狭く、指向性が高い。
A発信機と受信機の一体型で、出力はデジタル、アナログなど3通りあり、直接、コントロールボードのアナログ端子などに接続可能。
B3V〜5Vで使用でき、MANOIセンサーボード3.3VでもRCB-3の5Vでも直接接続可能。
C消費電流が3V では2mA,5Vでは3mA程度と非常に少なく、PSDの最大150mAと比べて省電力。
D感知距離と出力の精度が高い(特に短距離でPSDと同等)。
E小型で重量も4.3g程度なので両面テープで簡単に貼り付けられる。取り付け用のねじ穴も2か所あり搭載が容易。

一方、超音波を使用することによる干渉(短所)も分かってきた。干渉があるとノイズとなり正確な距離感知ができなくなる。
@仕様では15cm〜6m測定可能とあるが、3m以上になると床に反射した超音波と直進する超音波が干渉する(実際に観察した)。
A2個以上搭載すると、位相のずれにより相互に干渉する(位相を同期させる必要があり解説書FAQに接続法が記載されている)。
B自律バトルにおいては同型の超音波センサーを搭載した相手の発する超音波と干渉する。

短所の対応策・解決策
@自律バトルではPSDの感知範囲で使用するので、特段問題にならない。長距離に使用すると、周囲にいる操縦者、レフリーを感知するリスクが高くなる。
A角度が90°ずれた場合、180°ずれた場合の状態を確認する。同期させる配線は煩雑になり避けたい。
BPSDを補完するシステムとすれば特段の問題はない。

以上を考慮して、PSDセンサーと超音波センサーの複合システムを試みる。うまく設計できれば3.3V電源ボードなしで、自律センサーシステムが組める(PSD4個と超音波センサー4個の合計8個で750mA以下にできる)。

8.複合自律バトルシステム(PSDセンサー9個+超音波センサー1個)

3.3V電源ボード搭載によるPSDセンサー9個と小型超音波センサー1個の複合自律バトルシステムを構築してセンサールールNoA1(センサールールZシリーズに超音波センサー1個を増設したもの)を作成した。 第14回ROBO-ONE1回戦第7試合対レグホーンにおいて実戦試験を行った(第21回「MANOIセンサーボード(HRP100)」 センサールールNo.A1+超音波センサー試験)。

結果と考察
(1)対戦前にPSDセンサー9個と超音波センサー1個がすべて正常に動作していることを確認した。
(2)対戦中はセンサーがうまく相手を捕えていない。誤作動と思われる動作が非常に多い。センサーが近接を認識して近接攻撃しているはずであるが方向が全く別方向。近接攻撃のセンサー設定値は高いので原因不明。
(3)場外へ落下したが、何を認識して移動したか不明。レフリーではない。正面左側の照明に反応か?
(4)原因として考えられるのは、@捕捉のPSDセンサーの設定値が低すぎるので誤作動する。8方向をすべてセンスしているからかもしれないが、探索動作が一度もなかった。ただし、これで近接の誤作動が説明できない。A照明による誤作動の可能性。PSDは赤外線に近い長波長の光を使用しているのでフィラメント電球の照明の光が干渉している可能性がある。自宅ではセンサーの認識が自律がうまく動作するがなぜか本番の舞台ではうまく動作しないことが多い。舞台の照明が蛍光灯のみでないことが多いので検証の必要がある。

当面の対策
@センサールールのチェック。書き込みのエラーの可能性もあり。
A捕捉のセンサー設定範囲の400〜1200を500〜1200に、探索のセンサー設定範囲を0〜400を0〜500に修正(500⇒400への変更はY6⇒Y7作成時)。
B超音波センサーの取り外し(超音波センサーは前方近接攻撃のみ設定しているので誤作動の原因の可能性は低いが誤作動の原因究明を単純にするため)。
Cフィラメント電球の照明の影響の検証、真上からならよいが、横方向からの照明に誤動作する可能性あり。


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